もう一つ、いわゆる介護が必要な方の義歯、食養に頭を悩ませることがあります。

それは本人が義歯を使いたくないと思う方が非常に多いことです。健常者の場合、義歯を入れて食事をする事は慣れとともに通常の生活に馴染んできます。しかし認知症を患う患者さんにとって慣れというのは大変な苦しみでもあります。その為せっかく義歯を作っても入れている患者さんが少ないということです。

大抵、認知症患者さんの家族の方は「入れ歯を入れてあげないと可哀想」ということを言います。イメージ的には確かにそう思う事もあり、患者さん本人より周りの人のために入れるという事が多いようです。その為簡単に義歯をなくしてしまったり、中には食べてしまったりする人もいます。また、義歯の型を採ることは出来ますが、かみ合わせをとったり、義歯が出来上がる前に一度合わせてみたり(試適)することも困難を極め認知症の方のそこからの人生を私たち歯科がどのように携わり、満足いく人生を送ることが出来る様にするのか、未だにその答えは出ません。

このような患者さんの食養も咀嚼もそして嚥下にしてもそれぞれトラブルを抱えており、そのベストといえるものはなかなか見つかりません。これから高齢社会に対して私たちが考えるべき事はいかに高齢者も生き生きとした人生を送らせることができるかということです。