鼻の奥から強烈な悪臭

都内在住の50代男性は10年前、歯周病が進んで上の左右の奥歯がぐらつくようになった。「近所の歯医者からは、抜歯しなければ、周囲の歯もダメになるので、入れ歯かインプラントにしたほうが良いと言われたんです。」

クリニックでは、すぐ翌週にインプラント手術の予約が組まれた。歯科医からリスクの説明はなかったので不安はなかったという。

 

私どもの見解はまず、歯周病が進んで・・・というところ。どのくらい進んでいるのか。そしてその治療をする余地がなかったのか。ですね。

ここで問題なのは、入れ歯かインプラントにしたほうがいい・・・この時点でまず入れ歯かインプラント両方の利点、欠点を話しているはずです。インプラントにしても義歯にしてもどちらも人工物ですから欠点はあります。インプラントは値段、そしてどのくらい持つかということ。この患者さんは「6年が経った頃、異変が起きた。」と言っています。

 

【インプラントの誤解と誇大表現】

通常、上顎にインプラントを埋入し、骨と癒合していない場合、1〜2年でダメになります。6年通常に使用していたという事は定期検診、もしくは毎日のケアに問題があったかもしれません。

その証拠に患者さんが「歯周病が進んで・・・」と言っていること。歯もインプラントも歯周病になります。この方の歯を抜く前の歯周病の進み方がどの程度か診たわけではありませんが、患者さん自身も歯周病があることを自覚しているはずです。例えどんなに優れたインプラントの手術をしてもケアが出来ていなければ歯を失います。

徐々にインプラントに歯周病が進めば自分の歯と違い再生能力がない人工物は当然上顎洞(鼻の奥)への悪臭は出てきます。そうなれば上顎洞への感染があるわけですから頭も痛くなりますし、鼻汁も悪臭を放つものが出てきます。これはインプラントに限らず、根の治療の失敗、むし歯の放置、歯周病でも同じ事が起こります。

 

【セルフケアとインプラントの過信】

この文書からするとインプラントの失敗の様に思えますが、定期検診、ケアに対するアドバイス、もしくは衛生指導がなされているかどうかが問題です。新車で車を買って、整備を全くしなくて壊れてしまった。高いお金を出してそれが水泡に帰した。といっているようなものです。

大切なのはケアなのです。

また、謝罪もなく・・・とも。一つ言えるのは人間の体が永久に衰えない、病気にならない、死なないとすれば謝罪は必要かもしれません。

何度も言いますが、1年〜2年でダメになるのはインプラントがうまくいっていない可能性もあります。しかし、6年という月日は成功に匹敵するものなのです。

この記者が優秀ならば、ケアの重要性を読者に興味を持たせて書き上げることができるのですが、残念ながらそのような才能はないようです。(笑)