こんにちは。長野県岡谷市の太田歯科医院、歯科医師の太田大聖です。
このたび、小学校1年生の保護者の皆さまを対象に、お子さんのお口の健康についてお話しする機会をいただきました。
講話では限られた時間の中でお伝えできる内容に限りがあるため、ご家庭でも振り返っていただけるよう、今回お話しした内容に加え、日頃の診療でよくご相談を受ける内容も含めてまとめました。
小学生になると、乳歯から永久歯への生え変わりが始まり、お口の環境が大きく変化する時期です。この時期の習慣は、将来のお口の健康にも大きく影響します。
ぜひ、ご家庭でのお子さんのお口の健康づくりにお役立てください。
① むし歯予防は「歯磨きだけ」ではありません
「毎日歯を磨いているのに虫歯になってしまった…」
そんな経験はありませんか?
実は、虫歯は歯磨きだけで決まるものではありません。
・食べる回数
・ダラダラ食べ
・ジュースやスポーツドリンク
・フッ素の活用
・仕上げ磨き
これらがすべて関係しています。
甘い飲み物だけではありません!「酸性の飲み物」にも注意しましょう
「虫歯になるからジュースは控えましょう」と聞いたことがある方は多いと思います。
もちろん糖分は虫歯の大きな原因の一つですが、実は**飲み物の「酸性度(pH)」**にも注意が必要です。
歯の表面を覆っているエナメル質は、**pH5.5を下回る環境になると少しずつ溶け始める(脱灰)**ことが知られています。
特にコーラやスポーツドリンク、オレンジジュースなどは酸性が強く、ダラダラと飲み続けることで、お口の中が酸性の状態になる時間が長くなってしまいます。
飲み物のpHを見てみましょう!

この図を見ると、コーラやスポーツドリンク、オレンジジュースなどはエナメル質が溶け始める目安とされるpH5.5を下回っていることが分かります。
もちろん、「これらの飲み物を飲んではいけない」というわけではありません。
大切なのは飲み方です。
- 時間を決めて飲む
- ダラダラ飲み続けない
- 水分補給はできるだけ水やお茶を選ぶ
- 飲んだ後はお水やお茶を飲んだり、うがいをしたりする
これらを意識するだけでも、お口への負担を減らすことができます。
これから夏本番を迎え、アイスクリームやジュース、スポーツドリンクを口にする機会が増える季節です。
暑い日には熱中症予防も大切ですが、**「何を飲むか」だけでなく、「どのように飲むか」**もぜひ意識してみてください。
② 染め出しをぜひ活用してください
染め出し剤は、ご家庭で歯磨きの磨き残しを確認するためのものです。
「毎日しっかり磨けている」と思っていても、実際に染め出しをしてみると、歯と歯の間や奥歯、歯ぐきの境目などに赤く染まる部分が見つかることがよくあります。
これは、お子さんが上手に磨けていないということではありません。小学生はまだ手先の動きが十分に発達しておらず、大人でも磨き残しはあるため、とても自然なことです。
大切なのは、「どこが磨けていないのか」を知ることです。
ぜひ鏡を見ながら、「ここが赤くなっているね」「次はここを意識して磨いてみよう」と親子で楽しみながら取り組んでみてください。
また、永久歯が生え始める小学校低学年は、お口の中がデコボコして非常に磨きにくい時期です。特に生えたばかりの6歳臼歯は歯ブラシが届きにくく、むし歯になりやすい歯として知られています。
この6歳臼歯を磨くことができるのは、親御さんだけです!!
染め出しは一度やって終わりではなく、月に1~2回程度、できれば週1回行うだけでも、お子さんの歯磨きの上達につながります。
ぜひ、ご家庭で歯磨きを見直すきっかけとして活用してみてください。
当院でも、「毎日磨いているのに虫歯になってしまった」というお子さんに染め出しを行うと、ご本人も保護者の方も「こんなところが磨けていなかったんだ!」と驚かれることが少なくありません。磨き残しを見える化することは、歯磨きの質を高める第一歩です。

③ よく噛むことは、お口の発達にとても大切です
最近は昔に比べて柔らかい食事が増え、噛む回数が少なくなっていると言われています。
よく噛むことは、食べ物を細かくするだけでなく、お子さんのお口や身体の健やかな成長にも大きく関わっています。
特によく噛むことで、
・顎の発達を促す
・唾液の分泌が増え、むし歯を予防する
・食べ物の消化を助ける
・満腹感を得やすくなり、食べ過ぎを防ぐ
・脳への刺激となり、集中力アップにつながる
など、多くのメリットがあります。
また、顎がしっかり発達することで、永久歯がきれいに並ぶためのスペースを確保しやすくなるため、歯並びにも良い影響が期待できます。
噛むトレができるグミやガムなどは、しっかり両方の歯で噛むことを意識することができ、お子さんが楽しみながら「しっかり噛む」習慣を身につけるきっかけとなる教材です。ぜひご家庭でも、「何回噛めたかな?」と親子で会話をしながら楽しく取り組んでみてください。
④ お口ポカンはありませんか?
普段、お子さんのお口は自然に閉じていますか?
テレビを見ているときや勉強をしているとき、ぼーっとしているときに、お口がポカンと開いていることはありませんか?
最近、小学生のお子さんでも「お口ポカン」と呼ばれる状態が増えていると言われています。一見すると何気ない癖のように見えますが、実はお口や全身の健康にもさまざまな影響を与えることがあります。
お口が開いている時間が長いと、
- むし歯になりやすい
- 歯肉炎になりやすい
- 歯並びや噛み合わせに影響する
- 口呼吸になりやすい
- お口が乾燥しやすくなる
- 風邪などの感染症にかかりやすくなる
などのリスクがあると考えられています。
「ただの癖だから大丈夫」と思われがちですが、お口ポカンの背景には、口呼吸や舌の位置、鼻づまり、お口の周りの筋肉の使い方などが関係していることも少なくありません。
普段からお子さんのお口の様子を観察し、「いつも口が開いているな」と感じたら、一度歯科医院で相談してみることをおすすめします。
当院でも、「お口ポカンが気になる」「歯並びと関係がありますか?」というご相談をいただくことが年々増えています。早い時期に気付くことで、ご家庭で取り組めることもたくさんありますので、気になる場合はお気軽にご相談ください。
⑤ 姿勢も歯並びに関係しています
「姿勢と歯並びって関係あるの?」と思われる方も多いかもしれません。
実は、お子さんの姿勢は、お口の周りの筋肉や舌の動き、噛み方にも影響を与えるため、歯並びやお口の機能とも深く関係しています。
例えば、
- 猫背で座ることが多い
- スマホやタブレットの使用で前傾姿勢になっている
- 食事中に足がブラブラしている
- テレビを見ながら横を向いて食べる
といった姿勢や習慣は、噛む力のバランスが崩れたり、舌の正しい位置が保ちにくくなったりする原因になることがあります。
また、足が床につかない状態で食事をすると、身体が安定せず、しっかり噛む力を発揮しにくいこともあります。食事の際は、足の裏が床や足置きにしっかりついた状態で座ることを意識してみましょう。
毎日の小さな習慣ですが、正しい姿勢で食事をすることは、お口の健やかな発達だけでなく、全身の成長にもつながります。
当院でも、お口ポカンや歯並びの相談で来院されたお子さんを診察すると、食事中の姿勢や普段の生活習慣が関係しているケースを経験することがあります。歯並びだけを見るのではなく、生活習慣も含めて見直していくことが大切です。
⑥ フロスは使っていますか?
毎日歯磨きを頑張っていても、歯ブラシだけでは歯と歯の間の汚れを完全に落とすことはできません。
特に小学生になると、乳歯と永久歯が混在する「混合歯列期」と呼ばれる時期に入り、お口の中が複雑になります。生えたばかりの永久歯は高さが揃っておらず、歯ブラシだけでは十分に汚れを落としきれないことも少なくありません。
そのため、デンタルフロスを毎日の歯磨きに取り入れることがとても大切です。
理想は毎食後ですが、学校生活などを考えると難しいこともあると思います。まずは最低でも夜の歯磨きの際には、フロスを使う習慣をつけることをおすすめします。寝ている間は唾液の分泌が減り、むし歯菌が活動しやすくなるため、就寝前のお口のケアは特に重要です。
また、小学校低学年のお子さんでは、自分一人でフロスを使うことはまだ難しい場合が多いため、保護者の方が仕上げ磨きと一緒に行ってあげると安心です。Y字タイプのフロスを使うと、初めてでも比較的簡単に行うことができます。
さらに知っていただきたいのが、歯と歯の間のむし歯は、見ただけでは分からないことが多いということです。
実際の診療でも、「見た目はきれいなのに、レントゲンを撮影すると歯と歯の間にむし歯が見つかる」というケースは少なくありません。逆に、表面に小さな穴が見えた頃には、内部でむし歯が大きく広がり、ぽっかりと穴が開いてしまっていることもあります。
そのため、歯科医院での定期健診では、お口の中を目で見るだけでなく、必要に応じてレントゲン撮影を行い、歯と歯の間に隠れたむし歯がないか確認することも大切です。
フロスによる毎日の予防と、歯科医院での定期的なチェックを組み合わせることで、むし歯から守っていきましょう。
⑦ 歯並びが気になったら
「歯並びは永久歯がすべて生え揃ってから相談すればいいですか?」
このようなご質問をいただくことがありますが、実はお子さんの歯並びは、気になった時が相談のタイミングです。
小学生は乳歯から永久歯へと生え変わる大切な時期です。この時期は顎の成長も続いているため、将来の歯並びや噛み合わせを考える上で、とても重要な時期でもあります。
例えば、
- 前歯がガタガタしている
- 受け口(反対咬合)が気になる
- 出っ歯が気になる
- 口がいつも開いている(お口ポカン)
- 指しゃぶりや舌を前に出す癖がある
- 永久歯がなかなか生えてこない
- 乳歯が抜けないのに永久歯が生えてきた
このような場合は、一度歯科医院で診てもらうことをおすすめします。
「今すぐ矯正治療が必要」というわけではありません。
まずは現在のお口の状態を確認し、経過をみてよいのか、それとも早めに対応した方がよいのかを判断することが大切です。
特に小学生の時期は、**顎の成長を利用した治療や、お口の機能を改善するトレーニング(MFT:口腔筋機能療法)**など、成長期だからこそできるアプローチがあります。将来的に歯を抜かずに治療できる可能性が高まるケースもあり、早めの相談が選択肢を広げることにつながります。
当院でも、「もう少し早く相談していれば…」というケースもあれば、「今は治療せず経過観察で大丈夫ですね」とお伝えするケースも多くあります。
だからこそ、「矯正を始めるかどうか」ではなく、**「今の状態を知るために相談する」**という気持ちで受診していただければと思います。
執筆者
太田 大聖(おおた たいせい)
太田歯科医院 歯科医師
- 日本小児歯科学会 専門医
- 日本障害者歯科学会 認定医
- PERF-JAPAN 認証専門医(歯内療法)
- 東京歯科大学卒業
長野県岡谷市の太田歯科医院にて、小児から高齢者まで幅広い診療に携わっています。
特に、お子さん一人ひとりの成長に合わせた診療を心掛けています。
地域の皆さまが安心してお口の健康を守れるよう、ブログでは歯科に関する情報を分かりやすく発信しています。
**「歯医者は痛くなってから行く場所ではなく、健康を守るために通う場所」**という考えのもと、予防を中心とした歯科医療を大切にしています。
この記事がお子さんのお口の健康づくりに少しでもお役に立てば幸いです。気になることがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。


