
~根管治療の本当の難しさと私たちのこだわり~
こんにちは!岡谷市の太田歯科医院、歯科医師の太田楓です。
本日のテーマは「歯医者が思う一番難しい治療」についてです。
これは歯科医師それぞれの考え方にもよりますが、私自身が日々の臨床で最も難しいと感じているのは――
「根の治療」、つまり「根管治療(こんかんちりょう)」です。
根管治療とは? 〜歯の神経を治す大切な処置〜
根管治療とは、虫歯が深く進行して神経(歯髄)に達した場合や、転倒や打撲などで神経が死んでしまったときに行う治療です。
歯の中にある「神経の部屋=根管」を清掃・消毒し、できるだけ無菌に近づけた上で、代わりとなる薬剤を隙間なく詰めて密閉するという、とても繊細で重要な処置です。
時間も回数もかかる、忍耐の治療
実際に根管治療を受けたことのある方はご存じかもしれませんが、
この治療は**「しっかりやればやるほど時間がかかり、回数も多くなる」**という特徴があります。
患者さんにとっても長時間口を開けていなければならず大変ですが、私たち歯科医師にとっても根気と集中力を要する治療です。
まさに「忍耐の治療」といえます。
根管治療が難しい理由
根管治療の最大のポイントは、どれだけ根の内部を隅々まできれいにし、緊密に薬を入れるかにかかっています。
しかし、これがとても難しい。なぜなら…
・ 根管の形や数、走行は人それぞれで全く違う
・ 細くて曲がった根の奥まで、目では見えない
・ 汚れや感染源を完全に取り切ることは極めて困難
・ 治療の成功か失敗かが分かるのは「数年後」だったりする
だからこそ、「100%成功する根管治療」は存在しないと言われています。
どんなに腕の立つ専門医でも、完璧に治療を行ったはずなのに、数十年後に再治療になるということもあるのです。
「治療したばかりなのに痛い」「膿が溜まっている」と言われたら?
中には、根管治療を受けた直後に痛みが続いたり、数ヶ月以内に膿がたまって再治療になるというケースもあります。
それには様々な理由がありますが、
私たちが日々心がけているのは、「そうした事態の確率を限りなく下げること」。
そして、歯の寿命を1年でも長く延ばすことです。
根管治療の歴史と進化
さて、少し視点を変えて――
「根管治療って、いつから日本で普及したの?」という素朴な疑問にも触れてみましょう。
答えは、1970年代。
「意外と最近だな」と思う方もいるかもしれませんね。
古代エジプトでは、歯の痛みに対してハチミツや薬草を使って対処していたとされています。
中世ヨーロッパでは砂糖の普及とともに虫歯も増加しましたが、当時は歯科医学が確立しておらず、歯の治療はなんと床屋が担当していたという驚きの話もあります。
19世紀後半になると、ようやく欧米で根管治療の研究が始まり、
日本でもステンレス製の器具の普及を経て、1970年代から一般的に行われるようになりました。
それから50年以上が経過した今もなお、根管治療の研究と技術革新は進化を続けています。
当院の根管治療のこだわり 〜精密で確実な治療を目指して〜
当院では、しっかりとした治療技術に加えて、より正確で確実な根管治療を行うために、
マイクロスコープや超音波洗浄、NiTiファイル、高性能な薬剤など、先進的な器具を導入しています。
これらは主にアメリカの歯内療法専門医で一般的に使用されているもので、治療の成功率を高めるための重要なツールです。
しかし、日本の歯科治療は保険診療が主流のため、
これらの高精度な器具や薬剤は保険でカバーしきれないことが多いのが現実です。
そのため、当院では希望される患者さまに向けて、自由診療による精密根管治療という選択肢をご提案できるような準備をしています。
もちろん、「高価な器具を使えば絶対に成功する」というわけではありません。
ですが、見えない部分を“見える化”し、届かない箇所をしっかり洗浄・消毒できる環境を整えることで、
私たちがもつ技術を最大限に活かすことが可能になると考えています。
肉眼で見て綺麗に見えてもマイクロスコープで確認すると汚れがついていることが多々あります。
これを特殊器具で洗浄します。
すると、かなり、変化があるのがわかると思います。
歯の寿命を延ばすために、今できること
根管治療は「歯の延命治療」とも言われています。
再治療を繰り返せば、歯は削られ、やがては抜歯になる可能性も出てきます。
だからこそ、一度目の治療をどれだけ精密に行うかが非常に重要です。
当院では、患者さまが一生涯ご自身の歯でおいしく食事ができるように、
目に見えない根の中まで全力で治療する姿勢を大切にしています。
不安なことは、どんな小さなことでもご相談ください
「根管治療って何回かかるの?」「前に治療したけどまた痛い…」
そういった疑問や不安、ぜひ遠慮なくご相談ください。
治療はもちろん、丁寧なカウンセリングとご説明も、私たちが大切にしていることの一つです。
歯科医師 太田楓(岡谷市・太田歯科医院)