太田歯科医院ブログ

BLOG

エナメル質形成不全とは??

2025.06.17

こんにちは。太田歯科医院歯科医師の太田です。

みなさんは、「エナメル質形成不全」というのを知っていますか??

 

エナメル質とは、歯の構造の最表面にある人体の中で最も硬い組織になります。その硬い組織があるため、どんな硬いものも食べることができたり、冷たいものや温かいものを食べたときに歯がしみることを防いでくれます。

 

ところが、そのエナメル質が育つ段階で何かしらの影響が出ると、エナメル質が上手に作られなくなってしまい、「エナメル質形成不全」という状態になってしまいます。

エナメル質が上手にできていないと、その下の象牙質が露出をしてしまい知覚過敏のような状態が常に起きてしまいます。

 

 

「エナメル質形成不全」の色は黄色や茶色、褐色など様々な色を呈します。審美的に悪いのはもちろんですが、歯が弱い状態なのでむし歯になりやすく、機能的には、歯が徐々に削れていってしまったり、冷たいものや温かいものを食べるとしみる症状がでてしまったり、場合によっては水すら飲むのも辛いような状態になってしまいます。

 

さて、「エナメル質形成不全」にはどのような原因でなるものがあるがあるでしょうか。図に示すように「エナメル質形成不全」には様々な原因があります。まずは、外傷によるものを示します。

 

 

これは、乳歯(子供の歯)の頃にぶつけたりしてしまった時、骨の中で育っている最中の大人の歯に影響がでてしまったような状態です。

 

次に虫歯によるものを示します。

 

これは乳歯の虫歯が進行して根の先の方まで炎症がいってしまった時に骨の中で成長中の大人の歯に影響がでてしまった状態です。

 

次に歯冠(歯の頭)が成長中の時期に40度以上の高熱を繰り返していた結果、「エナメル質形成不全」が生じたケースを示します。全身的な高熱でもお口の中に影響がでる可能性があるということです。

 

その他にも遺伝子疾患の結果、全ての歯に「エナメル質形成不全」を認めるケースもあります(遺伝子疾患の場合、「エナメル質形成不全症」という病名がつく)。

 

このように「エナメル質形成不全」には、ほとんど何かしらの原因があるのですが、近年、MIHMolar Incisor Hypomineralization)と言われる上下顎中切歯(上下の前歯それぞれ4本)および第一大臼歯(6歳臼歯)に限局する原因不明のエナメル質形成不全が注目されました。

 

発生頻度は11.9%と多く、これは、歯が生えてきた時に認められ、審美的な障害はもちろん、歯がしみるような症状がでることが特徴です(軽度であれば無症状)。また、重症度は左右対称ではなく、変色の見られる程度のものから、歯冠(歯の頭)が大きく崩壊してしまっているものまでさまざまです。

 

このMIHというのは2001年にオランダのアムステルダム歯科学術センターの学術研究者であるWeerheijm KL先生によって世界的に初めて発表されました。

その後、2003年にはMIHの診断基準が提案され、諸外国で主に小学生の児童を対象としてMIHの実態調査が行われています(Cho SY et al., 2008)

日本では、日本小児歯科学会を筆頭として徐々に浸透してきていますが、その浸透はかなり遅く、その病因や診断、治療法については未だに全ての歯科医師に浸透していないのが事実です(実際、学生向けの教科書でも記載していることが少ないため学生が知識をつけることも困難な状態にある)。

そのため、MIHの見た目上の問題から歯科検診で「むし歯」と診断されたり学校検診でも「むし歯」と診断されることが多々あり(エナメル質が弱く歯が柔らかいため)、健全な歯を削られてしまっているというのが現状です。

また、乳歯列(全ての歯が子供の歯の時期)の時はむし歯が全くなかったのに6歳臼歯が生えて本当は「エナメル質形成不全」であっても、まもなく「むし歯」と診断された時には保護者の方の心理的にも強い影響を与えてしまいます。

現在、考えられているMIHの原因については、次回お話をしようと思いますが、私が経験した中でのケースをお話しします。

 

この患児は、学校検診で「むし歯」と診断され、歯科医院を何件か周り、「むし歯・・・だと思う」という回答や「わからない」という回答をされ、最後に行き着いた歯科医院で「エナメル質形成不全(MIH)」と診断され、私に紹介で来た患児です。

もちろん、患児のお口の中にむし歯は1本もなく、MIHと診断しました。

本人は歯が生えた時から歯がずっとしみているというのが当たり前になっていたらしく、常温の水であれば飲むことができるが、冷たい水や氷、アイスなどは好んで食べることはなかったそうです。

 

既に歯がしみていた状態だったのでしみるのを防ぐ薬を塗って、様子をみましたが、どうも症状が軽減しなかったため、最終手段ではありますが、歯全体を被せるような治療を選択しました。

 

その後、前歯の色が改善された時、家の鏡でずっとみていたそうです(女の子だったので気になるのはありますよね)。

また、奥歯がしみることがなくなったので大好きなアイスやかき氷が食べられるようになったとすごく喜んでいました。「先生、下の前歯の色も治して!」と見た目を気にしてか言われましたが、しみる症状もなく健全な歯を削ることの方がリスクというお話しをしたところ、本人も納得していました。

 

 さて、子供の歯に「むし歯」が1本もない状態でもなぜMIHというものが生じてくるのでしょうか・・・。

 次回は、MIHの原因についてお話ししたいと思います。

 

日本小児歯科学会専門医

太田大聖 

カテゴリー

月別アーカイブ

人気のある記事

アクセス ACCESS

当院はJR中央本線「岡谷駅」から徒歩約12分、中央道岡谷JCTから車で約5分の歯医者です。