はじめに|天然歯1本80万円という衝撃のニュース
明けましておめでとうございます。
岡谷市の太田歯科医院 歯科医師の太田大聖です。
今年もよろしくお願いいたします。
さて、最近ニュースで
「天然歯1本の価値は約80万円」
という話題が取り上げられました。
「え?歯1本で80万円?」
と思われた方も多いのではないでしょうか。
しかしこれは決して大げさな数字ではありません。
一度失った天然歯は、どんなに優れた治療をしても“元通り”には戻らない
――それが歯科医療の現実です。
なぜ天然歯はそんなに価値が高いのか?
天然歯の価値が高い理由は、大きく3つあります。
① 噛む力・感覚が唯一無二
天然歯は
・ 噛む力
・ 微妙な感覚
・ 食感の違い
を脳に正確に伝えます。
インプラントや入れ歯では、この感覚を完全に再現することはできません。
② 周囲の歯・顎・全身への影響
歯を1本失うと…
・ 隣の歯が倒れる
・ 噛み合わせが崩れる
・ 顎関節に負担がかかる
・ 消化・栄養摂取にも影響
つまり
歯1本=口全体、ひいては全身の健康につながっています。
③ 一生涯の医療コスト
歯を失った後の治療は
・ インプラント
・ ブリッジ
・ 入れ歯
など、繰り返し治療が必要になります。
そのトータルコストを考えると、
「天然歯1本80万円」という評価は、むしろ現実的なのです。
天然歯1本80万円という数字は、
単純に「歯の治療費」を表しているわけではありません。
この金額には、
・噛めなくなることによる生活の質(QOL)の低下
・食事の楽しみが減ること
・人前で笑うことへの心理的ストレス
・治療のために何度も通院する時間的コスト
といった、目に見えない損失も含まれています。
歯を失うということは、
単に「1本なくなる」という話ではなく、
その後の人生に長く影響し続ける出来事なのです。
では、その天然歯を守る“最後の砦”が何か?
答えは
根管治療(こんかんちりょう)
です。
根管治療とは?簡単に言うと
虫歯が進行し、
歯の神経(歯髄)まで感染した場合に行う治療が根管治療です。
・ 感染した神経を除去
・ 根の中を徹底的に清掃・消毒
・ 細菌が再侵入しないよう密閉
この治療がうまくいけば、
「抜歯しかない」と言われた歯でも残せる可能性があります。
根管治療が“歯の寿命”を決める理由
根管治療は
見えない・分かりにくい・でも超重要な治療です。
実は…
・ 治療の精度
・ 使用する器具
・ 時間をかけられるか
によって、成功率が大きく変わります。
そして一度失敗すると
👉 再治療
👉 抜歯
👉 インプラント
という流れになりがちです。
「保険の根管治療」と「精密な根管治療」の違い
誤解してほしくないのは、
保険治療=悪いではありません。
ただし保険制度上、
・ 治療時間
・ 使用できる材料
・ 拡大視野(顕微鏡など)
には制限があります。
一方で精密な根管治療では、
・ マイクロスコープ
・ CTによる立体診断
・ 複雑な根管(MB2など)への対応
が可能になり、
歯を残せる確率が大きく高まります。
詳しくは過去のブログでも紹介させていただいております。
【徹底解説】保険の根管治療と自費の根管治療の違い|抜かずに治すために大切な選択
【徹底解説】自費の根管治療でできること|成功率が大きく変わる理由とは
「痛みが取れた=治った」ではない理由
患者さんからよく聞く言葉に、
「もう痛くないから大丈夫ですよね?」
というものがあります。
しかし、痛みが取れたからといって
感染が完全に取り除かれたわけではありません。
神経が死んでしまうと、
痛みを感じなくなることもあります。
その状態で放置すると、
歯の根の先に膿がたまり、
気づいたときには
「歯を残すことが難しい状態」になっていることもあります。
天然歯80万円を守るために、今できること
✔ 虫歯を放置しない
✔ 「抜歯しかない」と言われても一度相談する
✔ 根管治療の重要性を理解する
✔ 歯を“消耗品”と思わない
歯は
削った分だけ、寿命が縮む臓器です。
まとめ|歯を残す選択は、人生を守る選択
天然歯1本80万円。
この数字は「歯の値段」ではなく、
歯を失ったあとの人生コスト
を表しています。
根管治療は地味で目立ちませんが、
あなたの歯の寿命を左右する、最も重要な治療のひとつです。
「抜かずに治す」選択肢があることを、
ぜひ知っておいてください。
筆者紹介
医療法人至善会太田歯科医院
太田 大聖(おおた たいせい)
小児歯科専門医として、お子さんの成長発達を考えた歯科治療を行うとともに、
障害者歯科認定医として、配慮が必要な方の歯科診療にも日々取り組んでいます。
また、歯をできるだけ残す治療の一環として、
**PERF-JAPAN認証専門医(根管治療)**として、
虫歯が進行した歯や「抜歯が必要」と言われた歯に対しても、
精密な診断と丁寧な根管治療を重視しています。
根管治療は、歯の寿命を大きく左右する一方で、
見えにくく、難易度の高い治療です。
だからこそ、「本当に歯を残せないのか」を慎重に見極め、
患者さん一人ひとりにとって最善の選択肢を考えることを大切にしています。
このブログでは、
歯科医療の現場で感じていることや、
歯を守るために知っておいてほしい情報を、
できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。


