
こんにちは。岡谷市の太田歯科医院、歯科医師の太田大聖です。
私は「障害者歯科認定医」として、日々さまざまな患者さんと向き合っています。今回は、「発達障害と歯科の関係」について、保護者の皆さんにも分かりやすくお話しさせていただきます。
発達障害とは?そして「発達障害もどき」とは?
「発達障害」とは、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などを含む広い概念です。
たとえば、集団行動が苦手、忘れ物が多い、集中力が続かない、人との会話が噛み合わないなど――こうした行動が見られ、「うちの子、もしかして発達障害かも…?」と不安になる保護者の方も多いかもしれません。
実際、文部科学省の調査では2006年に約700人だった発達障害の子どもの数が、2020年には約9万人へと増加。14年間で約14倍になっています。
ただしこの数字には、「発達障害の診断がつかないけれど、似たような症状を持つ子ども」が多く含まれています。これを小児科医の成田奈緒子先生は「発達障害もどき」と呼んでいます。
「発達障害もどき」の原因は脳の成長バランスにあり
子どもの脳は一生かけて発達していくものです。小さなうちに気になる行動があっても、それがずっと続くわけではありません。
脳の発達にはバランスが重要で、このバランスが崩れてしまうと、一時的に発達障害のような症状が出ることもあります。特に近年では、睡眠・食事・運動などの「生活習慣の乱れ」が脳の成長に影響を与えていることがわかってきました。
発達を支えるキーワードは「セロトニン」と「規則正しい生活」
「セロトニン」というホルモンをご存知でしょうか?
セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、心と体を安定させる役割を果たしています。発達障害とされる子どもたちは、このセロトニンの分泌が少ない傾向があり、症状の一因とも言われています。
セロトニン分泌を助けるには、次の3つが重要です:
1、朝日を浴びる
2、十分な睡眠
3、規則正しい食事
この「生活のリズム」が整っていないと、子どもは不眠や便秘、イライラしやすい・落ち着かないなどの症状を引き起こします。実はそれも脳の成長が追いついていない「発達障害もどき」の原因のひとつと考えられます。
「心のコップ」を大きくする育て方
発達に遅れがある子どもは、刺激や不安に対する「心のコップ」がまだ小さいだけ。
生活改善と親御さんの関わり方で、コップの大きさは少しずつ大きくなっていきます。焦らず、丁寧に、子どもの成長を見守っていくことが大切です。
たとえば、3歳で「ASD傾向があるかも…」と思ったとしても、生活を整え、親が丁寧に向き合っていくことで、たとえ本当に発達障害があっても、大人になる頃には自分をコントロールできるようになる可能性が十分にあります。
歯科医院での対応|発達障害のあるお子さんも診療できます
では、こうした「他の子より苦手が多い子」に、歯医者での治療はできるのでしょうか?
答えはもちろん「はい」です。
たとえば、初めての来院で泣いてしまったとしても、それは自然な反応です。2回目に、診察鏡でお口を見せてくれたとしたら、それだけで大きな進歩です。
私たちは、そういった小さなステップを大切にしています。「できた経験」を積み重ねることで、子どもは自信を持ち、次のステップへ進むことができるのです。
また、聴覚よりも視覚で理解しやすいお子さんのために、当院では**絵カード(視覚支援)**も使っています。診療内容をイラストで伝えることで、不安を減らし、理解を助けます。
「Tender Loving Care」の精神で
太田歯科医院では、お子さんはもちろん、大人の方にも「Tender Loving Care(やさしい愛情ある対応)」を大切に診療しています。
発達障害のあるお子さんや、ちょっとした不安がある方でも、まずは一度ご相談ください。親御さんの悩みや不安を一緒に共有しながら、お子さんの心と体の健康を一緒に支えていきましょう。
日本障害者歯科学会認定医・日本小児歯科学会専門医
歯科医師 太田大聖(岡谷市・太田歯科医院)
使用した参考文献
スペシャルニーズデンティストリー障害者歯科 第2版
『「発達障害」と間違われる子どもたち』成田奈緒子著
『すぐやる脳』茂木健一郎著
Science Advances誌(2017年6月)